理事長挨拶:廣田先生(顔写真)
日本リンパ浮腫学会 理事長
医療法人社団広田内科クリニック 理事長
廣田 彰男

本邦におけるリンパ浮腫の歴史は40年余前に遡る。’77には日本リンパ学会の前身である日本リンパ系研究会が発足し、リンパ浮腫は主要なテーマであった。当時、リンパ浮腫の治療はリンパ浮腫組織切除術やリンパ誘導術などが主流であり、その意味で日本のリンパ浮腫診療の始まりは脈管外科医であったと言える。その後、外科的方法の限界が見え始め、徐々に内科的保存的治療へと移行し、’00年頃から治療法の一環としての複合的理学療法が知られるようになる。このように、リンパ浮腫診療の中心は脈管外科医から徐々に保存的治療を行う様々な分野の医療者へと移行していった。’08には治療の基本となる弾性着衣の保険適用がなされ、これを機にリンパ浮腫は急速に多くの医療者に関心を持たれるようになり、’09には厚労省委託事業リンパ浮腫委員会が発足し、内科的保存的治療は「複合的治療」として、広く脈管外科医も含めた各分野の医師そして医療者へと広がった。

平成28年度診療報酬改定においてリンパ浮腫に対する診療報酬改訂が行われることが明らかとなった。まだ全容は明らかではないが、更なるリンパ浮腫診療の拡がりが期待される。

リンパ浮腫診療は医師主導では完結できないことが大きな特徴である。治療自体がリハビリを中心としたセルフケアであるため、医師は直接治療に関与しにくく、看護師、理学療法士や作業療法士等、多職種との協力が必要となる。医師の専門分野も浮腫発症の基となる悪性疾患や浮腫治療上の立場などから極めて様々である。本学会は、これまで各分野で行われてきた議論を多方面からさらに深め、エビデンスに基づいた標準治療をチーム医療として医療施設で提供するための情報交換、情報発信の場となることをめざしている

リンパ浮腫は癌術後の後遺症としての側面が大きい。患者側から見ると、あくまで脇役であるから、身体的・精神的また経済的にも大きな負担にならない、必要最小限かつ十分な社会的診療体系であることが望まれる。今回の改訂によりリンパ浮腫診療の状況がより良くなったことは素直に喜びたいが、まだ不十分な点があるのも事実である。マイナーな立場であるリンパ浮腫が身の丈に合った発展を遂げ、患者に不要な負担をかけない診療体制ができることを望みたい。

リンパ浮腫治療の黎明期から40余年を経て、このたび日本リンパ浮腫学会が設立されることは大変感慨深いものがあります。リンパ浮腫診療に携わる各分野の医師、看護師、理学療法士や作業療法士等の多くの皆様のご支持、ご参加を頂きたくお願い申し上げます。

2016年2月29日