本書で述べている内科的な治療法は各国では複合的理学療法Combined physical decongestive therapyとして知られています。このポイントは①用手的リンパドレナージ(MLD)②MLD後の圧迫(弾性包帯、弾性ストッキング・スリーブによる患肢周径の維持)③圧迫した上での患肢の運動(弾性ストッキング・スリーブによるリンパ管へのマッサージ効果)④患肢の清潔(蜂窩織炎の予防)の4つとされています。内容的にはまったく同じ考えであり、本書はこの複合的理学療法の考え方を順序立てて述べているようにご理解頂ければ良いかと思います。また、しいて言えば複合的理学療法は患肢を上げることがあえて記載されておりませんが、治療上きわめて大きな影響がありますので、基本として常に念頭におくべきものと思われます。このような日常生活上の注意の重要性を強調するため、最近は「複合的理学療法を中心とする保存的治療」もしくは「複合的治療」と呼ぶようになっています。

 複合的理学療法は通常、第1期集中治療期と第2期維持治療期に分けられます。第1期は基本的には約1ヶ月間入院し、スキンケア、リンパドレナージ、運動療法とバンデージ法(弾性包帯)を行い、可能な限りリンパ浮腫の軽減を図る期間です。第2期は外来でセルフケアにより、軽減した状態を維持and/or軽減する期間です。

 しかしながら、第1期の入院治療は現実を考えるとほとんど不可能であり、さらに重要なことは、冒頭の治療の基本を踏まえて行えば、実際には外来治療でも第1期の集中治療期と同様の効果を上げることが十分可能なことです。この際、まず大切な事は、日常生活での患肢の挙上・運動と適切な弾性着衣の選択・着用方法です。すなわち、患肢は就寝時は元より、日常生活時も高めに維持するように心がけます。弾性ストッキング・スリーブは患肢に食い込みがない、適切な圧の製品で、脚や腕の形を整えるように着用することが大切です。脚では下腹部、腕では腋や肩には弾性着衣の効果は及ばないのでリンパドレナージも必要となります。

 なお、平成20年4月からの弾性着衣の保険適用でも弾性着衣が第一選択で、弾性着衣が使用できない時にのみ弾性包帯の使用が認められています。